Masuk指の動きに合わせて、体中に電流が走ったかのような感覚に襲われ、嬌声が大きくなっていった。
「あ?や、ソコ…………だめっ…………あぅ……ひっ、あぁっ……!」 「ここが気持ちいいんだね、もっと気持ちよくなっていいんだよ」 「あぅ……あ、あっ……何か、キちゃう……~~~っ!」 今まで感じた事のない快感が襲ってきて、必死にドミニク様の頭にしがみついた。そして体が激しく痙攣したと同時に、目の前でチカチカと火花が散っていく。
「ふっ……んんっ…………」
今のは何?さっきから与えられていた快感とは全然違う、頭の中が溶けてしまうかのような刺激だった。
下半身の疼きが解き放たれ、私の中は一生懸命ドミニク様の指を締め付けている。
「上手に達したね。可愛いよ、ティナ」これが達したという事?
私にも婚約者がいたし、閨教育はされていたので達したという言葉を聞いてどういう状態かはだいたい分かっていた。
そうなのね、これが達したという事……初めての絶頂がドミニク様によって、という事がとてつもなく幸せに感じたのだった。
彼とそんな事をする関係になるだなんて、誰が想像出来ただろう。
それにドミニク様は普段から王族ならではの高貴な雰囲気に包まれているので、こんな風に淫らな事をするイメージなど誰も湧かないと思う。
ドミニク様は私の中に入っていた指を抜くと、こちらを見ながら舌でペロリと舐めた。その顔がなんとも言えず雄の雰囲気を醸し出していて、いつもは紳士なのに獣のような怪しさが瞳の奥に見え隠れしているかのようで、ドキドキが止まらない。
そんな私にいつもの微笑みを見せてくれたかと思うと、また優しいキスを与えてくれる。ドミニク様とのキスが凄く好き……優しさと熱っぽさが入り混じっているような気がして、彼に愛されているような感覚になれるから。
私よりも一回り大きい彼の舌がまた入ってきて、そのままベッドに横たわる体勢になる。
本当に気持ちいい――――もっと、ずっとキスをしていたい。淑女らしからぬ行為かと思われてしまいそうだけど、長年想い続けてきたドミニク様への気持ちが溢れてきて、彼を欲しがる自分を止められない。
だんだんとまた蕩けた状態になった私の顔を見て、今度はシュミーズドレスをたくし上げ両足を広げられてしまい、先ほど指で弄られて湿った下着が露わになってしまう。 さすがに恥ずかし過ぎた私は、両手で顔を覆ってしまったのだった。 「や、恥ずかしい……!」「恥ずかしがらなくてもいいんだよ、全部見せてほしい。私の婚約者になった君の全部が見たいんだ……」
そう言いながら私の下着を取り去ってしまう。彼の指が叢をかき分けて顔を埋めた瞬間、蜜口を舌の腹で擦られ、舌を出し入れし始めたのだ。
柔らかい舌が出入りする感覚は何とも言えず不思議な気持ち良さがあり、ちゅぷちゅぷと卑猥な音を私に聞かせるように吸い付いている気がして、その様子に酷く興奮してしまう自分がいた。
「ひゃあ、あ、あぁっ……だめっ……そ、んな、とこ……吸わな、い……でっ」 あまりの快感から逃げようと腰が引いてしまいそうになるのを、彼がそうはさせまいと私のお尻を掴み、引き寄せられてまた強く吸われる。じゅるじゅると淫靡な音が室内に響き渡り、私は足先までピンと伸びきってしまって……いやいや言いつつも全身で快楽を貪っていた。
やがてドミニク様は指の腹で私の花弁を押しつぶし、摘まんだり転がしたりし始めたので、私の嬌声はいよいよ止まらなくなって――――
「そん、な……あ、あっ…………らめぇ……っ」 またしても全身が痙攣し、呆気なく達してしまう。 「…………はぁっ…………美味しい……」 私の股座から顔を出したドミニク様が恍惚とした表情をしている。こんな彼の表情など見た事がなくて、長いダークブルーの髪は汗で張り付き、舌なめずりしている姿が妖艶でゾクゾクが止まらない。
同時に妙に気恥ずかしさも襲ってくる。
私は顔を隠すようにうつ伏せになり、彼に背を向けた。
ドミニク様は私の耳元に顔を近づけ「嫌だった?」と聞いてくる。
大好きな声が耳元で……それは反則だわ。
しばらく顔が見られそうにないので「嫌ではなく……とても恥ずかしいだけです」と返すのが精一杯だった。
「ふふっ、じゃあそのまま後ろを向いていてもいいよ。ティナは動かなくていいから」 何を言っているのだろう?顔を上げた瞬間、後ろ向きの状態でお尻を持ち上げられて足を広げられてしまう。
彼の手ですっかり露わになった濡れそぼった蜜口を、後ろから舐められてしまうのだった。
「ひゃっ、な、あっ……何、を……んぁっ…………やぁぁっ」「んっ……溢れてくる…………」
「~~~~~っ!!」
ベッドに顔を埋めて必死に声を我慢するけれど体が反応してしまうのは止める事が出来なくて、私の意思とは逆にどんどん蜜は溢れて止まらない。 だんだんと彼の舌の動きが激しくなってきて、それに合わせて私の腰も自然と動いてしまう。 「~~~っ……ドミニクさまぁ……もうっ……!」 与えられる快感が体中を駆け巡り、一気に発散されていく。私はベッドに顔を埋めて声を殺して果てた…………目の前は真っ暗なはずなのになぜかチカチカしていて、光の中にいるみたいな感覚に襲われる。
「…………はっ…………あ……ん…………」「ティナ、大丈夫かい?」
「は、い……多分…………」
「無理させてごめんね。君が可愛いから、我慢出来なくて」
そう言って、夜会の時のように私の額にキスをしてくれる。でももう子ども扱いされているとは思わなかった。
ずっと大好きだった方に求めてもらえた事で、私の体に彼の熱が刻まれたような気がしたから。
少し大人の階段を上り、ほんのちょっとだけど自分に自信がついたような気がする。その後、両親が私とドミニク様の婚約を整える為に国王陛下にお伺いを立て、すぐに了承されたので私達は晴れて正式に婚約者となった。
ヤヌシュに婚約破棄を宣言されてからわずか4日の間に、私の状況はガラッと変わってしまったのだ。その間もヤヌシュとナタリア嬢の婚約は発表されず……お父様はその事をとても危惧して警戒をしていた。
するとその心配がすぐに現実のものになってしまう。
私とドミニク様の婚約が発表された翌日、フェンデルバーグ公爵とヤヌシュが二人で我が家に乗り込んできたのだった。
~・~・~・~・~・~「これはこれは、フェンデルバーグ公爵閣下とご令息のヤヌシュ君ではありませんか。今日は来訪されるご連絡は来ておりませんが、何かご用でもありましたかな?」
お父様が絶対零度の怒りを滲ませた言葉を2人にぶつけている。連絡もなしに貴族の屋敷に来るなど失礼極まりないのに……閣下とお父様の間に火花が見えるような気がするのは気のせいかしら。
「こんな場所で立ち話もなんですから、応接間に移動しましょう。お茶くらいなら我が家でも出す事は出来ますので。ほほっ」 お母様までも怒りを隠し切れない様子だわ。むしろお母様の方が怖いかも……ヤヌシュは両親の態度にすっかり萎縮してしまっていた。
でもフェンデルバーグ公爵だけは違う。
「相変わらずヴァッセル伯爵夫人は手厳しい。そして美しい」「……閣下からそのようなお褒めのお言葉、光栄ですわ。ですが私のような者にそのような言葉は不要ですので、お気遣いなく」
「気遣いなどではなく、本当の事です」
何だか閣下とお母様からただならぬ空気を感じるのは気のせい?二人の不穏な空気を切るかのようにお父様がお母様の腰に手を回し、閣下から見えないように隠してしまわれた。
私はお父様の情熱的な一面を見て、思わず顔が赤らんでしまう。
相変わらずお母様への愛が素晴らしいわね。
心なしかお母様が照れているわ。
皆のやり取りを見ながら一緒に応接間に移動しようとした時、閣下が私とヤヌシュに思いがけない言葉をかけてきた。
「ヤヌシュとクリスティーナ嬢は2人で話でもしてきたらどうかな?若い者同士、長年婚約していたのだから話したい事も沢山あるだろう」「そんな事、させられるわけが……」
お母様が言い終わらないうちにヤヌシュが私の手を引いて「それもそうですね」と言い始める。私は驚いて反論しようと思ったけれど、ヤヌシュが耳元で「君に聞きたい事があるんだ……頼む」と言われ、ヤヌシュの目を見ると明らかに何か話がありそうな雰囲気を出していた。
幼馴染だしひとまず話だけ聞いてみようと、お母様には大丈夫と目配せをして、二人で庭園に移動する事にしたのだった。「ん……っ」 朝陽の眩しさに目が覚め、まだ瞼は重いもののゆっくりと開いた。 目の前には愛する人が寝息を立てて眠っている。 ドミニク様……毎日お顔を見ているはずなのに、毎日ときめいてしまう。 私は昨日白ワインを一気飲みして倒れ、ドミニク様に運ばれてこのベッドで……はしたないことをしてしまったのを思い出し、恥ずかしくて枕に顔を埋めた。 皆が集まった王宮であんな風に乱れるなんて……! 「私の姫は朝から百面相かな」 「ドミニク様!起きていたならお声をかけてください!」 「ふふっ。可愛くてつい眺めてしまったよ。おはよう」 力強い腕に引き寄せられ、一気にドミニク様の温もりに包まれた。 体中に幸せな気持ちが染みわたっていく——。 「おはようございます……」 「体調はどう?」 「もう大丈夫です。ぐっすり眠れましたので」 「昨夜無理させてしまったかなと思ったけど、よかった」 またしても昨夜を思い出し、顔に熱が集まってくる。 絶対に赤くなっているに違いない。 恥ずかしくて顔を上げられずにいる私の耳元で、ドミニク様が昨夜の酒宴での話をし始めたのだった。 「昨夜皇帝陛下から、私が王族に戻ったらイースナビア帝国に短期留学しに来てはどうかと話があったんだ」 「留学?それは、どのくらい……」 「それほど長くはないと思う」 ドミニク様が帝国へ……イースナビア帝国へ行くこと自体は問題ないと思う。 私の中で引っかかっているのは、セリス嬢のことだ。 あのお方は明らかにドミニク様のことを想っている。
シルベリオ皇帝陛下の言葉に、部屋にいた皆が固まってしまう。 「え……いや、それは……」 私が歯切れの悪い返事をすると、陛下は「何が問題なのだ」と不思議そうな顔をする。 この皇帝陛下はどこまで自由なんだ……案の定すっかり目を覚ましたバズズ殿とセリス嬢は頭を抱えている。 私は西の人間だ。 しかも王族……西の国の王族が婚姻とは関係なく東のイースナビア帝国へ行くのは、西のウェインドル帝国がいい顔をするはずがない。 私が行くということはティナも行くということ。 白の魔女まで東に行ってしまうと知れば、ウェンインドル帝国は我が国に必ず圧力をかけてくるに違いない。 皇帝陛下もそれは理解しているはずなのに——。 「ふふっ、そう固く考えるな。王族に戻るということで、留学という形にして短期間滞在すればいい」 「留学……」 「西と東の友好関係を深める目的だとでも伝えれば、ウェインドル帝国も口を出せまい」 何も考えずに話しているように見えたのに……驚く私の横から、カルロ王子が言葉を発した。 「それなら私も自国に戻るので、クリスティーナに東の国に来てほしいですし、ちょうどいいです。そろそろ父上や兄上が国を挙げて動きそうですから」 「それについては私の方でも面白い情報が入っているぞ、カルロ王子。そなたの父や祖父が白の魔女の家族に対して、色々とやらかしていたようだな」 シルベリオ皇帝陛下はカルロ王子に詰め寄っていく。 物凄い圧だ……武道の心得などなくとも、自分が猛獣に睨まれた小動物になったかのような気持ちにさせられる。 それにしてもどこでその情報を? まさかアロッサ村でのことを見られていたのか……?! バズズ殿の方をチラリと窺うと、一瞬だけ目を伏せたのですべてを察する。 まさかあの時から見張られていたとは……! カルロ王子も青天の霹靂だったようで、驚きのあまり言葉が出てこない様子だった。 「私の推察でしかないが……カラドゥス王国はリドメキシアの秘薬についても関わっているのか?」 「…………はい。父上は子爵家がエデンからリドメキシアを持ち出し、秘薬を精製したのを嗅ぎ付けました。そして皇帝陛下に黙っているのを条件に、子爵家にリドメキシアの増産と精製を指示したのです……金は王家からいくらでも出すと」 「やはりな。我が国がいくら同盟の話を持ちだしても全く
「ティナ……ゆっくりお休み」 さっきまで私に欲望をぶつけられ、散々体に快楽を刻まれたティナは、ゆっくりと瞼を閉じていく。 お酒が回ってもう起きていられないのだろう。 徐々に寝落ちていく可愛い姿を見守りながら、彼女の額にキスを落とした。 「ド……ム…………」 眠りに落ちる刹那、私の名を呼び意識を手放した。 愛する婚約者であり、偉大なる白の魔女……彼女を守る為に、自分も戦わなくては。 彼女の中から自分の怒張を引き抜き、秘所からあふれ出る精を綺麗に拭き取り、ティナが健やかに眠れるように体を綺麗に整えていく。 そして自分の服装も整え、まだ皆がいる酒宴の場へと戻って行った。 「遅くなって申し訳ございません。ティナが眠りました」 「ドミニク!遅かったな、そうとう体調が悪いのかと皆で話していたのだ」 私が戻ると一番に声かけてきたのは兄上だった。 もう少し遅かったら誰かが様子を見に来ていたところだったか……危なかったな。 ふと視線を移すと、バズズ殿がソファの寄りかかりながら項垂れている姿が目に入ってくる。 「皇帝陛下、バズズ殿は……」 「ああ。あいつは白の魔女を酔わせてしまったので飲んだくれているのだ」 「え?!」 「騎士団長を務めてから、自分が守るべき者を守れなかったのは初めてだからな。はっはっはっ」 「はあ……」 バズズ殿のような凄腕の者でも今回の件は予測できなかっただろうから気にするなと言いたいところだが……きっとプライドの問題なのだろうな。 私は少し哀れに思い、バズズ殿に声をかけた。 「バズズ殿」 「う…………ティナ、さま……」 「………………」 恐らくバズズ殿はお酒に弱いのだろうな。 帝国の騎士団長が不慣れなお酒を煽るほど……しかしいつもは「白の魔女様」と呼んでいるのに「ティナ」の名を——。 ざわざわと嫌な予感が体を駆け巡る。 まさかバズズ殿はティナを……そんなことを考えていると、セリス嬢に声をかけられて我に返った。 「閣下」 「ああ、セリス嬢か。バズズ殿はすっかり潰れてしまっているのだが」 「まったく、団長もだらしない。放っておいて大丈夫です、その内復活しますので」 「そ、そうか……分かった」 回復力も並みの人間ではないということか。 「白の魔女様は大丈夫でしたか?」 「ああ、かなりお酒が
「んんっ、ん――……っ」 ここは王宮で、まだ皇帝陛下や国王夫妻、シェリアン様など皆が集まってお話されているというのに……私たちはベッドで乱れ、互いの唾液を絡ませる水音をくちゅくちゅと響かせていた。 「は……ぁ…………んぅ……」 「ティナ……君は私だけのものなのに」 ドミニク様の瞳が不安に揺れているように見えて、まるで独占欲を分からせるように、自身の昂りを私の股座に押し付けてくる。 「んんっ……や、ぁ……」 「イヤだって言いながら、自分から腰を押し付けているよ……やっぱり分からせないと」 まだドレスを着たままだったスカート部分をたくし上げ、下着を脱ぎ去り、私の恥部を露わにした。 そしてそこにふーっと息を吹きかけてくる。 「ひっ、やぁぁ……っ!」 「ひくひくしてる。可愛い。ここも私のものだ」 舌なめずりする音が聞こえてくるようだった。 そして次の瞬間、彼の舌が私の秘所を這っていく。 「ひゃあぁぁ」 全身が粟立つ快感。 指をねじ込まれ、気持ちいい箇所を的確に刺激し、腰が自然と浮いてしまう。 ダメ、気持ちいい……もっとソコをグリグリしてほしい……そんな私の気持ちが聞こえたかのように、ドミニク様の指がうごめく。 「あっ、あっ、らめ、イクッ、イッちゃ……うぅ……~~っ!!」 あっという間に達し、目の前がバチバチと弾けた。
「いや~~~ここの酒は美味いな!そう思わないか、セリス?」 「はぁ……陛下、飲み過ぎては会話も何もありません。閣下とお話したかったのでしょう?」 「相変わらずお前は小言が多いな。そんな事で好いた者の心を射止められるのか?」 「わ、私の事は放っておいてください!」 皇帝陛下は自身の部下であるセリス嬢に対して悪態をついている……これは止めるべきなのかしら。 皇帝と騎士団の隊長なのにとても距離が近くて親しげな事に驚いてしまう。 そこへドミニク様が近づき、陛下とセリス嬢の間に入った。 「陛下、私にお話しがあると仰っておりましたが、どのようなお話でしょうか?」 ドミニク様はセリス嬢に目配せをする……今のうちにその場を離れるように、さり気なく助け船を出したのね。 さすがドミニク様だわ。 やり方もスマートだし、優しくて見惚れてしまう。 セリス嬢はその場から去り……彼女の視線が…………ドミニク様を見る目が熱を帯びている。 やっぱり気のせいではなく、セリス嬢はドミニク様の事を……だからと言ってドミニク様が他の女性のところに行くとは思っていないけど。 でも胸がじくじくしてしまう。 こんなに素敵なのですもの、やっぱりモテるわよね。 私はモヤモヤする気持ちを抑えようと、果実水をちまちま飲んでいく。 「クリスティーナったら、そんなに果実水が美味しいの?」 一緒にソファに座っていたシェリアン様が不思議そうに聞いてくる。 向かいに座る王妃殿下も同じような表情をされているのを見て、自分の行動のおかしさに気付いたのだった。 「えっと、凄く美味しくて!」 「ふーん。まぁ、王宮の果実水だもの、美味しいに決ま
「ふむ、あなたはとても聡明な方だ。私の考えを見抜いていたとは……私があなたに会いたかった理由は一つ。オブシダンについて聞きたかったからだ」 固唾を飲んで皇帝陛下からの言葉を待つと、私が良く知る人物の名前を口にしたのだった。 「ダンについて?」 「そう。ダンについて。彼女とは連絡を取り合っているのか?」 「は、はい。先日まで彼女の庵で過ごしていましたし」 「何?!彼女の庵はまだあの木の上にあったか?!」 「はい……そのままでしたわ」 「そうか――」 皇帝陛下は大きな大きなため息を吐き、その場にしゃがみ込んでしまう。 どうされたのかしら……ダンと皇帝陛下が知り合いなのは知っていたけれど。 ダンも知り合いのようなものだと言っていたし、陛下もこんな反応をしているのだから二人は顔見知りである事は間違いない。 でも明らかに陛下の方が動揺していらっしゃるわ。 「あの、ダンが庵に住んでいると、何か都合が悪いのですか?」 私の質問に顔を上げたシルベリオ皇帝陛下は、全く都合が悪いというような表情ではなかった。 むしろ瞳がキラキラしていて、何かを期待しておられる? 「違うんだ、都合が悪いのではない。私は嬉しいのだ。以前は東の森に行くと会えたのに、最近は全く会えず……あの辺りはエデンを守る為に近づく人間がいれば迷いの森になる」 「迷いの森?エデンにはたどり着けないようになっているのですか?」 「そうだ。しかし私と出会い、ダンが呪いを受けてから力が不安定なのか、エデンが人間に見える日が増え……ダンの庵も人間の目に留まるようになった。だから私は東のエデンへの立ち入りを禁止にする法令を施行したのだ」 知らなかった……皇帝陛下に出会ってからダンが呪いを受けたという事は、二人の間に何か事件があったのかもしれない。 やはり彼女の体が小さい事で、少し力が不安定になっているのね。 ダンはあまり気にしてないようだけど、どうにかして呪いを解いてあげたいわ。 「どうにかして彼女の呪いを解く方法はないのでしょうか?」 「あるにはある……しかしその方法を知り、ダンは……アイツは姿をくらました」 「え?!どうして……」 「まぁ、方法が特殊だからだろうが……私の方は気持ちは決まっておると言うのに……」 陛下はそれについて聞かれると、口ごもりながらブツブツ言っ
「ティナとヤヌシュ君の婚約は、陛下の了承の元、解消する事が無事に決定したよ」 婚約破棄騒動があってから2日後、お父様が朝の食事の席で私に報告をしてくれた。 「そうですか」 お父様からの報告にとてもホッとしている自分がいる。 あんな事があってこれ以上婚約者でいる事は不可能だし、何よりお互いに想い人がいる状態なのだから、この婚約は解消した方が良かったのよね。 ヤヌシュの方にはナタリア嬢のお腹に彼の子供が宿っている。 不誠実な事をしていたとは言え子供に罪はないから、彼らの幸せを祈る事にしよう。 「まさかもうお相手のお腹に子供がいるとは驚きだけどね……」 私はこの婚
バタバタと王宮内を走り抜ける。 たしか裏庭にガゼボがあるから、早くそこへ行きたい……ほとんど人通りのない廊下を通り抜けて裏庭のガゼボにたどり着く。 そして中にあるベンチに座り、項垂れた。 「はぁ……はぁ…………っ」 荒い息を整えて、今の状況を頭の中で整理してみる。 一緒にいたナタリアという女性と結婚したいから、私との婚約を破棄したいと言うヤヌシュの顔は、今まで見た事もないくらい真剣で蕩けるような表情だった。 私には決して向けられることのなかった顔――。 本当に真実の愛を見つけたのね。 それは幼馴染として祝福してあげなければならなかったのかもしれない。 ただ、何もあの
王家主催の夜会当日―――― 両親に無理を言い、今日はとびきりオシャレをさせてもらった。 ごくごく薄い水色を基調としたプリンセスラインのドレスに、腕はオフショルダータイプのパフスリーブで、胸元は大胆にあけてみた。 髪は綺麗な真っすぐのホワイトブロンドだと両親にもよく褒められるので、あまり結い上げずにブルーグレーの蝶のモチーフの髪飾りだけを着ける。 首元には派手すぎないジュエリーと扇を持ってエントランスに向かうと、ドミニク様がすでに迎えに来てくれていて、私を階下で迎えてくれた。 「ティナ、凄く素敵だよ。見違えた……すっかり大人の女性だね」 ドミニク様は私のドレス姿
王家主催の夜会・7日前―――― ヴァッセル伯爵家の一人娘として生を受けた私は、クリスティーナと名付けられ、この春に19歳を迎えたばかりだった。 そして2歳年上の幼馴染の婚約者がいる。 見た目はお子ちゃまだと婚約者に言われるけれど、もう19歳だし、王家主催の夜会ではしっかりと貴族女性らしく振舞おうと意気込んでいた。 そんなある日、いつものように朝の食事をとろうとホールに入ると、すでにお父様とお母様が座っていたので私も急いで2人に挨拶をする。 「お父様、お母様、おはようございます」 私は完全にお母様に似たようで、髪色などもお母様と同じホワイトブロンドなので、まだまだ若







